症状別
便・尿の異常
小鳥さんの排泄物から非常に多くの事が分かります。消化の状態はもちろんのこと、発情から内臓疾患、中毒まで様々な事が分かります。
敷き紙は毎日交換します。その時に大きさ、色、形、臭いなど、普段の小鳥さんとの変化をよく観察することが重要です。
「便が大きい・便が少ない」場合に考えられる原因
小鳥さんは1日に約50個近く便をします。小鳥さん便が大きくなることは体調に変化が起こっていることを表しています。
- 発情行動(メス)
- 産卵中
- 胃疾患(感染症、腫瘤、異物など)
- 腸疾患(感染症、腫瘤、異物など)
- 総排泄腔疾患(炎症、腫瘤など)
- 腹腔内疾患(炎症、腫瘤、内臓疾患など)
- 腹腔内疾患(生殖器系疾患)
- その他の疾患
症例写真
抱卵行動の時はほとんど便をしません。1日で1~2個程度です。(このセキセイインコさんは抱卵行動・正常)
左の画像は正常な便です。右の画像はため糞によって出た1回の便です。ともにセキセイインコさんから出た便です。小鳥さんの繁殖期や病気の状態など様々な事により便の大きさは変化します。
ため糞のわきに正常便を並べてみました。大きさの違いが分かります。周りの紙のちぎり具合から、発情性である事が分かります。
「下痢(軟便)をしている」場合に考えられる原因
多くの小鳥さんの便はカンマ状(,)で白い尿酸が乗っています。水分はあまりみられないか、または少量のみです。
水分の多い便と下痢(軟便)の区別は便の形があるかどうかです。水分の多い形のある便は「多尿便」と言われます。それに対して、形がほとんどない、またはない状態の便を軟便、下痢便と言います。
- 発情行動(メス)
- 産卵中
- 塩土の過食
- ボレー粉の過食
- 胃疾患(感染症、腫瘤、異物など)
- 腸疾患(感染症、腫瘤、異物など)
- 総排泄腔疾患(炎症、腫瘤など)
- 腹腔内疾患(炎症、腫瘤、内臓疾患など)
- 腹腔内疾患(生殖器系疾患)
- その他の疾患
症例写真
小鳥さんの正常な便です。便はカンマ状(,)で白い尿酸が乗っています。
この便は軟便になります。便の形があまりなく、水分も多いです。
この便は下痢便になります。形がありません。
「便が黒い」場合に考えられる原因
小鳥さんの便は正常でも小さく黒っぽく見えます。病気のサインである黒い便との違いは何でしょうか?
違いは「便の艶(つや)」です。病気の黒い便の場合、つやつやとしたコールタール状の便が特徴になります。この便は非常に小鳥さんの状態が悪い事を表しています。この症状を見たらすぐ病院へ来る必要があります!!
- 事故、怪我
- 中毒(鉛など)
- 自咬症(SMB)
- 口腔内疾患(感染、腫瘤など)
- 食道疾患(腫瘤など)
- 頸部疾患(腫瘤など)
- 内分泌疾患(甲状腺疾患など)
- ソノウ疾患(感染、腫瘤、など)
- 胃疾患(感染症、腫瘤、異物など)
- 腸疾患(感染症、腫瘤、異物など)
- 腹腔内疾患(炎症、腫瘤、内臓疾患など)
- 腹腔内疾患(生殖器系疾患)
- 上部気道疾患(ウイルス性、細菌性、真菌性、事故、怪我など)
- 下部気道疾患(ウイルス性、細菌性、真菌性、寄生虫性など)
- その他の疾患
症例写真
この便は黒くてツヤツヤしていることが分かります。この便をコールタール状なので「タール便」とも言います。
観葉植物も種類によっては重篤な黒色便で中毒症状を出します。
「便が濃緑色」場合に考えられる原因
小鳥さんの便は正常でも小さく黒っぽく見えます。便は食べたものの影響を受けます。そのため、色が変わることもあります。
- 食事をしていない、食べられない(飢餓便)
- ヒマワリの種などの高脂肪物を食べた後
- 青菜を食べた後
- 着色料のついた食事を食べた後
- 中毒(鉛など)
- 感染症(細菌性、真菌性、ウイルス性など)
- その他の疾患
症例写真
緑色便でさらに下痢状です。この便はほとんど食事を取っていない場合などに見られます(飢餓便)。
緑色便ですが、やや濃緑色であるとが分かります。この便がでたら中毒(重金属中毒・鉛)を疑います。
症例写真
感染・中毒・飢餓などが考えられる
「便が赤い」場合に考えられる原因
通常の食事を食べていて便が赤くなることはありません。注意が必要です。
便が赤いのか?尿が赤いのか?便が赤い時、便の外側が赤いのか?便の中まで赤いのか?便が赤い時に尿の状態もよく観察してください。
- 着色料のついた食事を食べたとき
- オスの小鳥さんの自慰行為によって
- 中毒による
- 腸疾患(感染症、腫瘤、異物など)
- 腹腔内疾患(炎症、腫瘤、内臓疾患など)
- 腹腔内疾患(生殖器系疾患)
- 総排泄腔疾患(炎症、腫瘤など)
- その他の疾患
症例写真
便の色が真っ赤です
このカラーペレットの中の赤いものだけ食べたときに出る便なので病気ではありません。
血便なのか便に血が付いているかの区別は重要になります。写真のように便を擦った時どこまでも赤い時、血便となります。
症例写真
便の周囲や便の中に血が混じる。食べ物・雄の発情・感染・内臓疾患・総排泄腔疾患などが考えられる
「便の色が薄い(白っぽい)」場合に考えられる原因
小鳥さんの便の色は黒っぽく小さいです。その便が白っぽくなることはありません。
尿の白い部分(尿酸)と区別がつかなくなるほど白い場合もあります。
- 中毒による
- 腸疾患(感染症、腫瘤、異物など)
- 腹腔内疾患(炎症、腫瘤、内臓疾患など)
- その他の疾患
症例写真
便が白っぽくなっています。この便の時に小鳥さんはあまり症状が出ません。しかし、消化ができていない証拠です。腸疾患、腹腔内疾患(内臓疾患)があります。
重症化すると尿酸との区別がつかなくなります。そして、よく見ると粒がみられ未消化便にもなっています。
「尿が多い」場合に考えられる原因
小鳥さんの尿には2種類あります。「白い尿酸」と言われる尿と「透明の尿」の2種類があります。
このうち、透明な尿が多いということは、水を飲む量も多いということになります。
- 塩土のかじりすぎ
- 精神的(心因性、ストレス性など)
- 栄養性
- 発情性(メス)
- 発情性(オス)
- 興奮
- 脱水
- 内臓疾患(肝臓疾患、腎臓疾患など)
- 代謝性疾患(糖尿病、高カルシウム血症など)
- ソノウ疾患(感染、腫瘤、など)
- 内分泌疾患(甲状腺疾患など)
- 胃疾患(感染症、腫瘤、異物など)
- 腸疾患(感染症、腫瘤、異物など)
- 腹腔内疾患(炎症、腫瘤、内臓疾患など)
- 腹腔内疾患(生殖器系疾患)
- その他の疾患
症例写真
便の周囲に透明な尿が広がっているのが分かります。この時に水浴びや、遊んで水をこぼしていないことが重要になります。
便の形は崩れていません。そのため、下痢ではなく多尿便になります。
症例写真
便の周囲に水が広がる。発情・感染・内臓疾患などが考えられる
「尿が黄色い」場合に考えられる原因
小鳥さんの尿には2種類あります。「白い尿酸」と言われる尿と「透明の尿」の2種類があります。
このうち白い尿酸と言わる尿は身体から出る老廃物(プリン体)から構成されています。
- 着色料のついた食事を食べたとき
- 中毒疾患など
- 感染症(細菌性、真菌性、ウイルス性など)
- 腹腔内疾患(炎症、腫瘤、内臓疾患など)
- 腹腔内疾患(生殖器系疾患)
- 自己免疫性疾患など
- その他の疾患
症例写真
一見、尿が黄色く見えますが、尿酸は白です。これは文鳥さんによく見られますが、時間がたつと透明な尿に少し便の色が付くことがあります。しかし、尿酸はそのままの色です。この尿はやや水分は多いのですが、正常になります。
尿酸が黄色に変色しているのが分かります。これは感染症や内臓疾患など様々な病気が疑われます。
「尿が緑尿」場合に考えられる原因
小鳥さんの尿には2種類あります。「白い尿酸」と言われる尿と「透明の尿」の2種類があります。
このうち白い尿酸と言わる尿は身体から出る老廃物(プリン体)から構成されています。
- 着色料のついた食事を食べたとき
- 中毒疾患(鉛など)
- 感染症(細菌性、真菌性、ウイルス性など)
- 腹腔内疾患(炎症、腫瘤、内臓疾患など)
- 腹腔内疾患(生殖器系疾患)
- 自己免疫性疾患など
- その他の疾患
症例写真
尿全体が緑がかっています。この尿は急性の感染症などを表します。
尿酸がかなり緑色になっています。この小鳥さんはオウム病でした。
この尿は緑でもあり赤くもあります。重金属中毒・鉛中毒で見られます。非常によくない状態です。すぐに治療を必要としています。
「尿が赤い」場合に考えられる原因
小鳥さんの尿には2種類あります。「白い尿酸」と言われる尿と「透明の尿」の2種類があります。
このうち白い尿酸と言わる尿は身体から出る老廃物(プリン体)から構成されています。
- 敷き紙の色
- 着色料のついた食事を食べたとき
- 中毒疾患(鉛など)
- 感染症(細菌性、真菌性、ウイルス性など)
- 腹腔内疾患(炎症、腫瘤、内臓疾患など)
- 腹腔内疾患(生殖器系疾患)
- 自己免疫性疾患など
- その他の疾患
症例写真
赤い尿が出ているように見えます赤い丸の中
広告の裏が赤いためそれが染みたものです。敷き紙の裏も注意が必要です。
少しわかりづらいのですが尿に血が混じっています。この小鳥さんは腎臓障害によって血尿が出ます。
これは赤い尿ですが、血尿ではなく血色素尿と言います。重金属中毒・鉛中毒の時に見られます。重金属は赤血球を溶かします(溶血)。それに伴って尿が赤くなります。
左が正常な小鳥さんの血液、右が重金属中毒の小鳥さんの血液になります。遠心分離機で赤血球と血漿に分けると右が赤いのが分かります。溶血している証拠です。これが尿出て血色素尿になります。
こういう事にも注意
「プチプチ音がする」場合に考えられる原因
小鳥さんは呼吸をするときに音は出ません。もし、呼吸時に音が確認できた時にいつもなのか?たまになのか?ご飯食べる時か?午前なのか?午後なのか?夜なのか?よく観察してください。
- 精神的(心因性、ストレス性など)
- 栄養性
- 興奮
- 内臓疾患(肝臓疾患、腎臓疾患など)
- 代謝性疾患(糖尿病、高カルシウム血症など)
- ソノウ疾患(感染、腫瘤、など)
- 内分泌疾患(甲状腺疾患など)
- 胃疾患(感染症、腫瘤、異物など)
- 腸疾患(感染症、腫瘤、異物など)
- 腹腔内疾患(炎症、腫瘤、内臓疾患など)
- 腹腔内疾患(生殖器系疾患)
- その他の疾患
症例写真
口の中に感染症を起こし潰瘍ができてプチプチ音が出てしまいます。(このハトさんは原虫疾患・トリコモナス症)
トリコモナスの顕微鏡動画です。
この小鳥さんは夜になるとプチプチと呼吸に合わせて音がします。(このセキセイインコさんは内分泌疾患・甲状腺機能低下症など)
ストレス
ストレスは病気ではありません。ストレスが病気の原因になる場合があります。
- 様々な病気(感染症、内臓疾患など)を引き起こす
人間がストレスによってからだの調子を悪くすることがあるのと同じように、小鳥さんもストレスでさまざまな病気になってしまうことがあります。
例えば代表的なストレス性疾患の一つである「自傷行動」をご存じでしょうか。自傷行動とは小鳥さんが自分自身を傷つけてしまう病気です。
自傷行動は、自分で羽を噛んで抜いてしまう病気です。この状態を放置していると今度はくちばしで皮膚を傷つけるようになってしまいます。
こうした小鳥さんの症状を見ると、正気を失ってしまったと感じるかもしれません。でも、小鳥さんは決して自分の命を絶とうとしているわけではありません。
毛をむしったり皮膚を傷つけたりするのは、その行動によってストレスを発散し、小鳥さんが正常な精神状態を保とうとしているからです。
小鳥さんは小さなことでもストレスに感じる繊細な生き物。飼い方や小鳥さん自身の問題だけでなく、全く関係がないと思われることでもストレスと感じて自傷行動をします。例えば、飼い主さんの寝る時間や、家族のケンカが原因でストレスを溜め込んでいることもあるのです。
そのため小鳥さんの病気を治すためには、周りの環境も把握する必要があることから、当院ではカウンセリング時に飼い主さんのプライベートなことまでお伺いすることもあります。
もしかしたら思いも寄らないことが、家族の一員である鳥さんの心を傷つけていた可能性も。病気の解決に少しでも繋げるためにも、まずは当院にお越しください。